たまには一人でジパング


心の癒しを求めて今日一人で近所の日本料理店へ。そこの料理が本場に近いから癒されるのではなく、むしろ逆。そこはいかにも「台湾的な日本料理」を出してくれるから、寄って行った。また、給仕の姉さんのその余るほどの親切さにも触れたいので。
店の名前は「吉田家」。二十年前、うちがこの辺に引っ越してきたばかりの時には「吉田」という名前だったが、いつの間に「家」がついた。自分の記憶が信用できるならば、「吉野家」が台湾に入ってきて間もなくのような気がするが、とにかく気がついた時にはもうそんな紛らわしい名前になった。
一番好きな料理というと、子供の頃は「花寿司」という名の寿司が好きだった。大きくなってアレは寿司ではなく、太巻き(寿司)だということを知り、かなりショックだという記憶が。中身の具の半分ぐらいは日本の寿司ネタにないもの*1だとわかった時、自分はもう大学生だった。ご飯巻きで、巻く時に使ったラップが付いたままで運んでくるのが仕様。で、そのラップを剥がして食べるのが、子供の自分のなんともいえない楽しみだった。
そのほかにも一切れ厚さ3.5センチの刺身*2と、野菜とカマボコの刻み入りの親子丼とか、台湾ならではの日本料理があるけど、いま自分の好物と言ったら「牛肉チャーハン」で…って日本料理でさえないじゃん!と突っ込むのはお願いだからやめましょう。
結局、夕食は牛肉チャーハンと茶碗蒸しでした。ごちそうさま。
昔、ヨーロッパでは日本のことを「ジパング」と呼ぶ。日本人じゃない外国人の目で見た、日本のこと。吉田家の料理も、「ジパング」の一つの形だろうな、と店に来るたびに思う。「そんなの日本のものじゃない!」と叫ぶ輩はきっといるけど、そもそも日本じゃないところで日本日本としつこく求めること自体が野暮、と早く気付けよバカ。
そのままの日本もいいけど、ジパングもその面白さがある。両方とも無理なく楽しめる自分は、幸せだと思う。
日本の方は台湾に来たらどうしても日本食を避けたがるが、今度台湾に来て余裕があれば、ぜひこのような台湾風日本料理店に寄ってみてください。きっと楽しい発見がいっぱいと思う。探すのが面倒だったら、吉野家にも驚きたくさんだよ。
料理の写真を撮ろうとは思ったが、一人ではあまり代表的な(?)品を数で食べれないので、代わりに今日届いてきたばかりの新刊を。三月上旬発売の第三巻、まだ冒頭しか読んでいないが徐々にいいところにきてる。西尾維新といえば代表作は戯言シリーズだが、自分はこちらのほうが読みやすいんだ。本当に時代劇小説っぽくない時代劇小説で、忍者浪人巫女が次々ならぬ月々と出てくるこの作品は、まさに外人目線に合わせた現代ジパング絵物語。ちなみに十二ヶ月間連続刊行という荒行でがんばってるので、こんなわけのわからない紹介で興味が湧いた感性の豊かな方は、ぜひ応援してあげてください。

*1:細かく刻まれた具が多く、ほとんど原型がわからない。肉鬆(豚肉のそぼろ)とマヨネーズとこう…やわらかい何かが、今でも私には謎だが。

*2:台湾の平價(お手頃価格)日本料理店では普通のこと。まあ台湾では大きいのがいいということなので、本場のように薄く切られたらお客さんは損な気分になるから、店の方もがんばってできるだけ厚く切る。うちの父さんが同席したらそんな分厚い刺身はリテイクされるが。