鬱だ

ここんとこ台湾では二つの事件がある。大きいのが一つで、一つはニュース番組が時間の埋め合せのために作ったやつだと思うが。

大きいのは民進党元主席施明徳氏による「百萬人民倒扁(百万人民による陳水扁追放運動)」で、一人100元(日本円約300円)を出し、8月23日から9月23日まで台北総統府前のマラソン式抗議デモの資金として使おう、という運動。日本ではほとんど提起されていないが*1、台湾では連日報道されている。11日から18日まで一週間ですでに8千万元が集まった。学者や芸能人やよくわからない詩人とかも出てきて支援したりしてさ、募金の三つの振込先が全部施明徳氏の個人口座にも構わずに。もっとも、人民の蜂起を煽り、政敵を潰そうとするこのやり方はどうしてこうもうまくいける?台湾は法治国家だと思ったんだが、それは私の勘違いなのか?

もう一つは、台湾大学の心理学教授黄光國氏の「マンガとアニメに没頭する若者は大麻中毒者と同じ」、「コスプレイヤーはアホ」、そして「若者はもっと政治に関心を持ちなさい、倒扁運動に参加すればいいのに」という問題発言。個人的には、黄氏の発言ははっきり言ってどうでもいいけど*2、嫌になっているのはその後の展開だ。BBSのマンガやアニメ板では黄氏への悪口雑言がズラリと並び、そして大手漫画出版社の雑誌編集長が「10月の即売会でみんな一緒に台湾大学へ行って、黄光國に『同人誌即売会に参加しろ』と『ファンに謝れ』の要求を出そう」みたいな運動をネットで呼びかけ始めた。驚いたことに反響は上々、黄氏への抗議を応援する人が続出。

…本当はアホですということを自ら証明してどうするんだ。アホか。問題はそこじゃないだろう。

だいだいデモをして、謝ってもらって、何になるんだろう。貴重な資源やエネルギーをあんなに消耗したって、何もならないじゃないか。毎日毎日ああいうのを飽きずに繰り返して一体何を得ようとするのか。ああ、そうね、安心感が得られるかもしれない、「私は認められている」という感覚が心に満たされるかもしれないね。

ほしいものはそれだけか。

そうだったら私は何もしてあげられない気がする。私は安心感なんかいらない、不安がって何かかを作り、不安がって残し、そして不安ながらもさらに新しい何かかを作りたいんだよ。

バカか。

……原稿が全然終っていないのに、やる気も何も起こさない。この国はまさか…国に見えて実は国ではないのか。私がしていることは、単なる死に際の足掻きに過ぎないのか。

どうすればいいんだよ、ちくしょう。

*1:現在確認できたのは台湾の中央廣播電台日本語版だけ。

*2:そもそも生産性も国内経済への影響力も伴わない、完全消耗型の台湾アニメ・マンガファンは、このように批評されるのは全然おかしくないし、「倒扁運動に参加〜」を抜きにしてむしろ的の射た発言。